理想は、車2台持ち。
釣り用と、走り用。
釣り用は、まさに動くタックルボックス。
タックルやボートが快適に載せられることが大前提。
汚れても草木に擦っても気にならないボロさが案外重要。
燃費が良ければ尚よろしい。
悩ましいのは、デカい車体の魅力と、釣り場までの狭い道での取り回しとのバランスである。
それと、釣りであれ車を走らせるわけなので、
コーナリングとか加速とか、Nushの思う運転の楽しさをどこまで我慢できるか。
そうでないと、車体が小さくなり、積載能力が落ちてしまう。
もっとも、嫁がビアンテを買ってから、
ゆったりとミニバンを運転するのも、たまにはいいものだと思い始めたのだが。
とはいえ、釣り用の車だけでは退屈だ。
通勤手段も、車。
仕事は決して楽ではない。行きたくない日だってたくさんある。
娯楽は基本的には週末のみ。
だったら、通勤時間くらい、楽しくしたい。
ないだろうけど、もし釣りをしていなかったら、一番の趣味は車だというくらい車は好きだ。
となれば、運転が楽しい車が必要。
運転に楽しさが見出せれば、毎日が少し明るくなるはず。
そんな運転が楽しい車といえば、やはりスポーツカーだ。
パワーに対して車体が軽い。
重心が低く、コーナリングが楽しい。
体の一部のようにアクセル、クラッチ、シフトノブ、ブレーキを扱える。
乗りたくなる、走りたくなる外観。
釣りと車が好きであることは、Nushの中では相反する要素が多く悩ましい。
2年前、NDロードスターを買った。
デミオスポルトを釣り用に、NDを走る用にした、念願の2台体制が実現した。
仕事に行く朝も、心が晴れた。
NDに乗りたくて、朝は少し早く起きるようになった。
免許はあれど、初めてのMTはエンストが心配だった。
でも、クラッチも体の一部のように扱えるようになった。
NDは大事に使いたいので、主に天気が良い日だけ乗っていた。
雪が積もれば暖気のみか、雪がない道だけをたまに走らせた。
その分、ワイルドに扱えるデミオが心強くなった。
雨続きや積雪でNDに乗らない日が続くと、バッテリー上りが心配だった。
デミオと同じ1500ccだが、パワーの違いが分かった。
オープンに興味はなかったが、屋根を開けて走ることの楽しさが分かった。
FR特有の背中を押す加速感が分かった。
交差点を曲がるだけで、低い視点でのコーナリングが楽しかった。
黒い車体、黒いホイールに合わせて、エンブレムを全て黒に塗り、
一体感のある外観にまとまった。
毎週、優しく洗車をした。
車を停めて降りた時、何度も愛車を振り返った。
汚しても傷つけても気にならず、NDを出したくない悪路でも走るデミオは、まさに「相棒」。
多少のことは笑って許してくれるような、根っこで信頼し合っている親友のようだ。
NDのおかげで、デミオのたくましさを感じられるようになった。
それに対し、NDは「恋人」。
傷つけず丁寧に、大切に、いつまでも付き合いたいと思っていた。
そんなNDと、この夏を前に別れることになった。
今年度、育休を取り、収入がなくなったためだ。
育休を取ると決めてから、薄々気付いていた。
貯蓄だけでは、無収入の一年間を乗り越えられないと。
NDを手放す。
分かっていても、つい最近までこの現実に気付かないふりをしていた。
仕事から一旦離れて、2歳になった娘だけに全力を尽くすことは、人生の中で二度とない。
自分が小さい頃に保育園に入ってから今まで、学校や社会の「時間割」の中で過ごしてきたが、
育休中は、そこから外れて「自由に」過ごせる。
この一年を終えたら、およそ30年後に退職するまで、そんな自由はない。
この一年間は、娘と正対して過ごすことができる。
育休を取ったことは、決して後悔はしていない。
それでも、
やっぱり、一度惚れたNDと別れるのは寂しい。
時節柄、NDの売値は予想よりもかなり高かった。
そのおかげで、育休中の経済的な心配は無くなった。
育休中の安心は、NDが作ってくれた。
来年度は復職する。
金ができ次第、釣り用と走り用の2台体制をまた作るつもりだ。
次にNushが乗る走り用として、
NDを買うのか、別の車が欲しくなるのか、
今はまったく分からない。
しかし、自分がスポーツカー好きであることを、NDが確信させてくれた。
NDに「さよなら」は言わない。
デミオ、もう少し一緒に頑張ろう。
ND、またな。